【飲食プラットフォーム銘柄】変革期の市場における4社の成長と課題

ぐるなび

現代の飲食業界は、消費者の行動様式とテクノロジーの進化が複雑に絡み合い、大きな変革期を迎えています。
ライフスタイルの多様化やデジタル化の急速な進展は、外食・中食市場に新たな需要を生み出す一方で、飲食店経営のあり方にも変化を迫っています。
特に、オンラインでの情報収集や予約、デリバリーサービスの利用は一般化し、飲食プラットフォームの役割はますます重要度を増していると言えるでしょう。

そのような市場環境において、飲食プラットフォーム企業は、情報仲介に留まらず、飲食店のDX支援や新たな顧客体験の創出へと事業を拡大しています。
また、このような市場さらにその動きは、食材流通やM&Aといった飲食店のライフサイクル全体をサポートする領域へも広がり、顕著なものとなっています。

本記事では、こうした変革期において独自の戦略で市場に挑む飲食プラットフォーム4社の取り組みと、その成長可能性及び事業上の課題について紹介します。

“デリバリーの日常化”を牽引するプラットフォーマー「株式会社出前館」

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株式会社出前館は、1999年設立の夢の街創造委員会株式会社を前身とし、デリバリーサイト・アプリ「出前館」を運営しています。
同社は多くの人々に選ばれるプラットフォームを目指し、便利なサービス提供を通じて地域社会を支えるライフラインとしての役割を追求しています。

出前館の強みは、長年かけて築いた広範な加盟店ネットワークと、安定稼働する自社開発プラットフォームです。
これにより、多様な選択肢と信頼性の高いデリバリー体験をユーザーへ提供しています。
変化する市場環境に対応しつつ、ユーザーと加盟店双方にとって価値あるサービスの構築を進めているのです。

さらに成長戦略として、大手IT企業との連携を積極的に進めています。
2016年よりLINE株式会社(当時)と、2024年からはLINEヤフー株式会社と協業し「Yahoo!クイックマート」を開始。
また、配達品質の向上や効率的なマーケティング施策も展開中です。

今後の展開として、同社は「デリバリーの日常化」を一層推し進めることが予想されます。
ノンフード分野の強化やYahoo!クイックマートの全国展開は、新規顧客獲得と利用頻度向上を通じて、市場シェア拡大に繋がるものと期待されます。
しかし、激化する競争環境や配達員の確保、自社システムへの依存は、事業運営上のリスク要因として注視が必要となりそうです。

>>出前館ついてもっと詳しく出前館の成長戦略「営業赤字500億円」の向こう側について考える

飲食店とユーザーを繋ぐ情報プラットフォームからDX支援へ「株式会社ぐるなび」

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株式会社ぐるなびは1996年に飲食店情報検索サイト「ぐるなび」を開設し、運営してきました。
現在は飲食店等の情報提供サービスを主な事業内容としています。
長年蓄積した飲食店との強固なネットワークと情報を基に、近年は飲食店の経営課題解決に貢献する多様な業務支援へと事業領域を拡大しています。

現在ぐるなびは、楽天グループとの連携を強化し、「楽天ぐるなび」として1,000万人超の楽天ID連携会員基盤を活用した集客支援を展開しています。
楽天会員向けロイヤリティプログラム「幹事ランク制度」を開始するなど 、楽天エコシステムにおける楽天ぐるなびのプレゼンス向上と送客力強化に取り組んでいます。

さらに、飲食店のWeb集客を一括支援する「マーケティングエージェント」事業も本格化。
加えて、モバイルオーダーサービス「ぐるなびFineOrder」の導入拡大や、生成AI技術を駆使した次世代食体験アプリ「UMAME!」の開発といった「ぐるなびNext プロジェクト」を進めています。

外食市場では集客手段の多様化が予想される中、ぐるなびの楽天連携深化やDX支援拡大は、加盟店の集客・効率向上に寄与し、同社の新たな事業機会となることが見込まれます。
一方で、競争激化や飲食店の経営課題への対応は、重要な課題と考えられます。

飲食店のライフサイクルを網羅するプラットフォーム「株式会社シンクロ・フード」

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株式会社シンクロ・フードは2003年の設立以来、飲食店向け多角メディアプラットフォーム「飲食店ドットコム」を運営しています。
このプラットフォームは、飲食店の開業から運営、M&A・退店までライフサイクル全体を網羅的に支援する点が特徴です。

飲食店ドットコムでは、求人広告サービス「求人飲食店ドットコム」、店舗物件情報、厨房備品EC、食材仕入れ先検索、店舗デザインのマッチングといった、開業・運営支援サービスを幅広く展開。
これにより飲食店経営の各段階における課題解決をサポートし、飲食業界の労働生産性向上や業界全体の発展・成長に貢献することを目指しています。

さらに食材のオンライン受発注システム「PlaceOrders」や、キッチンカーのシェア・マッチングプラットフォーム「モビマル」といった新サービスも提供し、新たなニーズに対応しています。
また、飲食店の事業承継や円滑な退店を支援するM&A仲介事業や居抜き譲渡サポートも展開し、ライフサイクルの終末期までカバーする体制です。

飲食業界では、労働生産性向上の余地が大きく残されていると考えられており、同社のワンストッププラットフォームはこれらの課題解決に貢献し、さらなる成長の可能性があるでしょう。
一方で、飲食業界の景気動向や採用市況の変動、競争激化はリスク要因として注視が必要です。

>>シンクロ・フードついてもっと詳しくコロナ禍を超えて絶好調「シンクロ・フード」ショート動画で更なる成長へ?

実名口コミで食の信頼を繋ぐプラットフォーマー「Retty株式会社」

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Retty株式会社は2010年に設立、実名型グルメプラットフォーム「Retty」を運営しています。
このプラットフォームは、実名登録を基本とし、信頼性の高い飲食店情報提供を特徴としています。
ユーザーは信頼できる人の口コミを通じ、自身の嗜好に合ったお店を発見できる「ヒトからお店を探す」というコンセプトを強みとしています。

Rettyでは、ユーザーが実名で投稿する口コミを中心に、個人の好みに合わせたお店検索やおすすめ情報を閲覧可能です。
また、SNS連携機能も備え、友人の投稿を参考にしたり、自身の食体験を共有したりできます。
同社が特定のエリアやジャンルに詳しいと認定した「Retty TOP USER」制度も存在し、認定されたユーザーが情報を提供しています。

飲食店向けには、サブスクリプション型の飲食店支援サービスを展開し、これには、Retty内での上位表示や広告掲載、ユーザー情報管理が可能な顧客管理システムが含まれます。
さらに、店舗データや実名口コミ等の蓄積データを基盤とした「Food Data Platform」をクライアントに提供しています。

今後、信頼できる情報源へのニーズが高まる中、Rettyの強みは独自の価値を発揮する可能性があるでしょう。
データ活用によるサービス強化や飲食店支援の拡充が成長を後押しすると期待されます。
一方で、競争激化や収益安定化、過去の財務状況を踏まえた持続的成長基盤の確立が重要課題です。

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